ドロップアウト産婦人科医の生活

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長生きの秘訣

お母さんが逝ってしまったのは、暑さも最高の、こんな汗だくの季節でした。

仕事の文句ばっかり言って、お母さんをずいぶん心配させてきたけど、何だかんだと
今もハードな毎日を続けているよ。相変わらず愚痴もいっぱいなんだけど。

天国から見てるだろうか、母ちゃん。


今、お母さんと同じ卵巣癌のおばあさんを診ています。
90歳という年齢や体力などから、手術も抗癌剤もせず、対処療法のみの治療です。

お腹が苦しくなれば腹水を、胸が苦しくなれば胸水を抜いて、また楽になって家に帰っていきます。
食欲もあって好物のお肉(!)をいっぱい食べて、家では孫や家族と賑やかに過ごされています。
小さな体のおばあさんにもし抗癌剤をやっていたら、とてもそれどころじゃなかったかもしれません。

当初は家族の中から「何もしないなんて可哀相だ。」なんていう意見もありました。
相談の末、告知もせず、苦痛だけを取ってあげるだけ。でもこれも重要な「治療」です。

癌を抑える治療は何もしていないのに、全身に潜んでいる癌の進行は高齢のせいか、とてものんびりです。すでに末期だと診断されてから、もうすぐ半年近くになろうとしています。すごい。

いくら体がしんどくてもトイレは自分でと、頑なに人の手は借りません。
しょっぱい漬物を食べ、熱いお風呂に毎日入り、連日の猛暑日もクーラーは嫌いだと扇風機だけカラカラまわして、家族が言っても止めないマイペースなおばあさんだそうです。

「抜いても抜いてもどんどん水がたまるって、不思議な病気だねぇ。」と笑いながら話すおばあさん。
きっとこんな性格も病気の経過に関係しているのかもしれません。

毎回、私やスタッフが汗だくになって、おばあさんのいいようにあれこれ奮闘している様子に
「皆さんにこんなにやってもらって、もう十分満足です。」とおばあさんはいつも感謝の言葉を言ってくれます。


何がいいのか悪いのか、人の価値観や人生観はそれぞれで、ただその希望に沿ってベストの医療を提供するのが仕事ですが、自分の家族に対するように接する気持ちも忘れないようにしたい今日この頃でした。
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Commented by school-t3 at 2010-07-31 23:42
>お腹が苦しくなれば腹水を、
胸が苦しくなれば胸水を抜いて、
また楽になって家に帰っていきます。
食欲もあって好物のお肉(!)をいっぱい食べて、
家では孫や家族と賑やかに過ごされています。

最高の治療ですね^^
おばあさん、良い先生に当たってよかったですね。
癌の拠点病院だったらどうしていたんでしょうね~??
Commented by kurukuruX at 2010-08-09 19:28
>school-t3 さん
お返事遅くなりました!いつもコメントありがとうございます。
治療効果を予想するのはなかなか難しい問題ですが、治療により得られる尊い「時間」も何にも変えられないのも事実なわけです。
癌拠点病院での先端医療によっても、またそうでなくても、おばあさんを始め、患者さん全てには可能な限り、楽しい充実した時間を沢山持ってもらいたいものです。
by kurukuruX | 2010-07-31 11:20 | 仕事 | Comments(2)

只今、二度目のドロップアウト中。


by kurukuruX